中国スマート家電最前線:トップ5企業の戦略と展望を読み解く

生活家電がインターネットに接続しスマート化する傾向は日増しに高まり、技術も成熟しつつある。

中国は世界最大の家電生産・消費国で、2019年の生産額は3500億元(約52兆5000億円)に上っている。中国ではここ数年、IoTやAI技術などの新技術が成熟すると同時に、消費者の層や生活様式、消費レベルも変化しており、家電製品の革新が進んでいる。新たな家電製品は若年層の生活習慣に合わせて開発された新たな機能を備え、高齢者層にも便利さを提供し、都市部の生活環境や賃貸住宅中心の居住環境にも配慮されている。中国では、整備されたサプライチェーンシステムに裏打ちされた、高品質低価格な「新家電」が打ち出されている。

業界構造:

業界の成長を推進する力:

市場における消費レベルの向上、賃貸住宅の増加、家庭規模の縮小、新技術の開発コストの低下。

今回は、市場における将来性が見込めるスマート家電分野の優良企業5社とその製品を紹介する。

 

 

1. 小米科技 Xiaomi シャオミ

設立:2010年年3月

本社:北京市

資金調達状況:香港証券取引所上場

主な関係先:米半導体大手「Qualcomm(クアルコム)」、液晶パネル大手「ジャパンディスプレイ(JDI)」、シンガポールの政府系投資会社「テマセク・ホールディングス(Temasek Holdings)」、ソニー。日本支社はアマゾンジャパンと提携。

公式サイト:https://www.mi.com

企業紹介:

シャオミはモバイル端末機器を中心にスマート家電の開発を手掛けている。主な製品はスマホやタブレットPC、ノートパソコン、スマートテレビ、ロボット掃除機およびその他スマート家電。スマートデバイス以外にもAndroid向けファームウエア「「MIUI(米柚)」やスマートテレビ操作システム「小米TV」を提供する他、ユーザーコミュニティ「小米社区」などにもサービスを広げている。

製品紹介:

シャオミが手掛ける家電製品の代表がスマートエアコンだ。ユーザーはモバイルアプリ「Mi Home」を通じて空調温度のコントロールや運転予約ができる。0.1℃単位の正確な温度設定や風量・風向設定、睡眠時間に合わせた運転予約も可能で、温湿度センサーと連動して室内環境をコントロールする。スマートスピーカー「小愛同学」と連動させて音声操作することもできる。市販されている従来型のエアコンとは異なり、シャオミのスマートエアコンは同社製品の特徴でもあるシンプルなデザインで、若い消費者の美的センスとマッチしている。この他、同社の家電製品には冷蔵庫や洗濯機、電気圧力鍋、空気清浄機、電子レンジなどがあり、大部分の製品には一定程度のインターネット接続機能がある。

36Kr アナリストのコメント:

シャオミは創業当初からスマホに注力し、現在は世界シェア第4位のスマホメーカーとなっている。2014年からは優れたサプライチェーンの管理能力とIoTの統合能力を活用し、資本投下と独自の研究開発を通じてスマート家電市場を開拓してきた。家電製品の大部分はシンプルで現代的なデザインを採用し、手軽にインターネットと接続できる機能を搭載している上、価格も抑えているため、若い消費者の人気を獲得している。同社は先ごろ日本市場に参入しているほか、東南アジアやインドにも拠点を構えている。同社の製品はこれらの地域でより大きく発展する潜在力を秘めている。

 

 

2. 北京352環保科技(略称、352環保科技) Beijing 352 Environmental Protection Technology

設立:2010年年3月

本社:北京市

資金調達状況:「ベルテルスマンアジア投資基金(BAI)」、「華泰証券(HTSC)」および「経緯中国(Matrixpartners China )」から2億元(約30億円)を調達。

公式サイト:http://www.352air.com

企業紹介:

352環保科技は空気清浄に関する全般的なソリューションを提供する革新的なテクノロジー企業だ。製品には空気清浄機や送風機、マスク、自動車用エアエレメント、車載空気清浄機、空気質測定器などがある。

製品紹介:

352環保科技の家庭用空気清浄機「Y100C」は、粒子状の物質やホルムアルデヒド、花粉のほか、細菌やカビ、ウイルスなどを吸引し、健康へのリスクを効果的に解消できる。Y100Cは、同社が独自に開発したホルムアルデヒド測定アルゴリズムにより室内のホルムアルデヒド濃度や粒子状の汚染物質のレベルを正確に測定し、必要があれば自動で運転を開始する。標準モードでは、ホルムアルデヒドの除去効率が650㎥/3時間(20㎡の部屋を3分間で清浄化できる)、粒子状物質の除去率は950㎥/3時間となっている。信頼できる実験データによると、ホルムアルデヒド濃度は0.03mg/㎥まで低減でき、細菌やウイルスおよび花粉の除去率は99.99%に達する。睡眠モードでは、騒音レベルの平均値が静かな図書館よりも低い約33dbとなる。Y100Cはアプリによるリモートコントロールが可能で、アプリからさまざまなパラメータの照会ができるほか、消耗材の使用期限も知ることができる。

36Kr アナリストのコメント:

中国ではここ数年の深刻な空気汚染により、空気清浄機への関心が高まっている。2017年の空気清浄機の国内販売台数は600万台を超え、輸出台数も1000万台以上となった。352環保科技は、中国の国産空気清浄機の優良ブランドだ。同社は工業用空気清浄機に長年取り組んでおり、製品の性能指標は優秀な水準を示している。同社はホルムアルデヒドや花粉、細菌・ウイルスなどの除去機能を開発し、汚染物質が比較的多い都市部の消費者向けに製品を提供している。日本で販売されている同種の製品に比べ、同社の製品は機能が豊富な上に低価格だという特徴がある。

 

 

3. Yeelight

設立:2012年年11月

本社:山東省青島市

資金調達状況:シリーズCで「凱輝基金(Cathay Capital)」「順為資本( Shunwei Capital)」および家具販売大手「紅星美凱竜(MACALLINE)」から資金調達(金額非公表)。

主な関係先:同社製品は小米(シャオミ)の「小米小愛」、アリババの「天猫精霊(TmallGenie)」、百度(バイドゥ)の「小度(Xiaodu)」、Microsoftの「Xiaolce(シャオアイス)」、Google Assist、米アマゾンの「Alexa(アレクサ)」など各社スマートスピーカーと連携可能。

公式サイト:https://www.yeelight.com

企業紹介:

Yeelightはスマートライトの開発を手掛け、スマートライト全般のソリューション提供に注力している。製品はインテリア照明やデスクライト、ムードランプおよび照明のスマートコントロールなどにわたる。すでに世界中に向け累計約1100万台を出荷しており、ユーザーは約100カ国・地域に広がっている。高品質な光環境を作り出し、より多くの人がスマート照明による便利さと楽しみを味わえるよう取り組んでいる。

製品紹介:

Yeelightの主力製品、スマートLEDカラー電球は、スマホアプリで直接コントロールすることが可能。ユーザーはスマホアプリで好きな色を自在に選択することも、おすすめメニューからシーンごとの明るさや色合いを設定することもできる。複数の電球を連動させることや、オンオフの時間設定、リモートコントロール、明るさ調節などの機能がある。また、スマートスピーカーと連動させ、音声によるコントロールも可能。さらに、音楽に合わせて色調や明るさを変化させることもでき、音楽や映画を鑑賞する際、没入型の体験が楽しめる。

36Kr アナリストのコメント:

Yeelightは、中国のスマート照明のトップブランドで、世界市場においてオランダの電機大手フィリップスのスマート照明「Philips Hue」最大のライバルとなっている。スマートスピーカーやスマートセンサーを搭載した機器が普及する国も増えており、今後はスマート照明が暮らしの中でより多くの没入型の体験をもたらす可能性がある。創業から7年余り、同社の製品は機能を成熟させる一方、価格を競合他社より抑え、若年層の認知度を獲得している。東南アジアではECおよびオフラインの販売ルートを設けており、日本市場にも先ごろ参入している。

 

 

4. 科沃斯 ECOVACS エコバックス

設立:1998年年3月

本社:江蘇省蘇州市

資金調達状況:上海証券取引所上場

主な関係先:インテル、グーグル。

公式サイト:https://www.ecovacs.com/jp/

企業紹介:

エコバックスは、家庭用および業務用サービスロボットと小型家電の開発・製造を手掛けている。主な製品は掃除ロボットや窓拭きロボット、家事管理ロボット、空気清浄ロボットなど。

製品紹介: エコバックスの最新モデル「DEEBOT T8」は総合的な機能を持つ床掃除ロボットで、グーグルの「TensorFlow(テンソルフロー)」が推奨するルート計画ソリューション「AIVI」を搭載している。レーザーセンサーと広角カメラを組み合わせ、作業ルート上の障害物を迅速に識別し、すぐ脇を通過することができるため、隅々まで掃除ができる。DEEBOT T8は作業中、室内の正確なナビゲーションマップを生成し、ミリ単位で障害物の位置を表示する。また、住宅内の異なる機能エリアの区分や、部屋ごとの掃除計画と機能設定が可能。スマホアプリを通じて掃除予約やエリア設定することもできる。掃除完了ごとにレポートも作成し、ユーザーに処理すべき障害物を知らせ、実際のニーズに従って掃除のやり直しもする。DEEBOT T8はゴミの吸引と拭き掃除の機能が一体化されており、異なる材質の床や多様な汚れに対応できる。窓掃除ロボット「WINBOT」は2019年度レッド・ドット・デザイン賞を受賞している。

36Kr アナリストのコメント:

エコバックスは世界をリードする掃除ロボットメーカーの一つで、独自開発した室内ナビゲーションとルート計画ソリューションは業界内でも先進的なレベルに達している。2018年には全世界で414万台の家庭用サービスロボットを売り上げた。ここ数年、掃除ロボットの開発コストの低下による低価格化が進んでいる。中国では高齢化が進み、ペットを飼育する家庭が増え、外で仕事をする若者も多いことから、掃除ロボットを購入して家事労働から解放される家庭が次第に増えている。中国と同様の傾向にある日本でも、市場における掃除ロボットの未来は明るい。エコバックスはすでに日本法人「エコバックスジャパン」を設立しているほか、東南アジアでもECや代理店を通じて製品を販売している。

 

 

5. 雲丁科技 Yunding Technology

設立:2014年年5月

本社:北京市

資金調達状況:シリーズDで6億元(約90億円)を調達。出資者は百度(バイドゥ)、「聯想之星(Legend Star)」、順為資本、「SIG(海納亜州創投基金)」など。

主な関係先:不動産大手の「碧桂園(Country Garden)」と「万科企業(Vanke)」、不動産賃貸プラットフォームの「自如(Ziroom)」、小米(シャオミ)、家電大手の「美的集団(Midea Group)、家具販売大手の紅星美凱竜。

公式サイト:http://www.loock.cn

企業紹介:

雲丁科技はスマートホームセキュリティ製品およびサービスの開発・製造を手掛けている。「より安全で素晴らしい暮らし」を使命に、科学技術による革新を通じて、家庭の信頼できるパートナーになれるよう取り組み、個人向けの「鹿客(Loock.)」と事業者向けの「雲丁」の二大ブランドを擁している。鹿客はスマートロック「Touch」を旗艦モデルとしており、雲丁は集合住宅向けにスマートロックやスマート電気・水道メーターおよび管理用SaaSなどの製品を提供している。

製品紹介:

個人向けスマートロックの最新モデル「P3」は、指紋や暗証番号、Bluetooth(ブルートゥース)を利用した解錠のほか、リモート認証および緊急開錠など多様な開錠方式が利用できる。指紋認証では指紋のほか、材質や電導性のテストを総合し、98.94%の正解率で迅速に本人を識別する。近距離無線通信技術の国際標準規格「NFC」と「Zigbee」によるセンサーネットワークを連携させ、阿里雲(アリババクラウド)の「ID2 INSIDE」を経て承認が行われる。また、ICチップとファームウエアによりセキュリティ情報の改ざんや偽造を防止する。またドアは自動で施錠され、子どもを守るための外からの施錠システムや、実際の暗証番号に不要な番号を加えて入力することを求めることで部外者の解錠を防ぐシステムなども搭載している。ホームゲートウェイと接続すれば、ドアロックに異常があった際には地元警察とスマホアプリに情報が送られ、リモート操作で臨時の暗証番号を設定できる。さらに音声による解錠など便利な機能もある。

 

36Kr アナリストのコメント:

スマートロックは鍵を忘れて困っていた昔を忘れさせてくれる。個人の利用シーンでは、鍵の紛失などによる面倒をなくすと同時に、暗証番号方式を採用することで友人の来訪にも対応する。事業者については、スマートロックの登場で長期賃貸集合住宅の管理コストが大幅に低減される。リモート管理を通じてスマートロックに臨時の暗証番号を設定することができるため、賃貸住宅の内見にも便利だ。賃借人が入居後に設定した暗証番号は退去時に自動で失効するため、従来のように鍵の引き継ぎやコピー、紛失対応などが必要なく、不動産管理の効率が高められる。

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